
東海東京証券株式会社(以下、東海東京証券)のコールセンターでは、呼量(コールセンターへの入電量)の波による応答の遅れや、オペレーターのスキル・経験による応対品質のばらつきが課題となっていました。
こうした課題の解消に向け、東海東京証券がpluszero、アップセルテクノロジィーズと共同で開発したのが、同社の業務に合わせてオーダーメイドで設計された「AIオペレーター miraio(ミライオ)」です。専門用語や多様な言い回しから、お客様の要望を的確に把握する「意図推定力」と、人と話すような自然で滑らかな対話を高く評価し、導入を決定しました。有人オペレーターが通話へ割り込める機能も実装し、トラブルを未然に防ぎながら、お客様を待たせない体制の構築を進めています。
本記事では、miraioを開発した背景や開発時にこだわった点、今後の展望について、システム推進部の山本拓磨氏とカスタマーサポート部 部長の上條万里氏に伺いました。
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<導入前の課題>
- 呼量の波により、電話がつながるまでに5〜10分ほどの時間を要していた
- オペレーターのスキルや経験値によって、応対品質にばらつきが生じていた
- 応答遅延による苦情の発生や、お客様の機会損失につながる懸念があった
<導入後の効果>
- 高い意図推定力により、多様な言い回しからお客様の意図を把握しやすくなった
- AIの通話に人が割り込める機能を実装し、苦情やトラブルを未然に防ぐ体制を構築した
- 事務手続きをAIが担うことで、定型の手続きについては、お客様をお待たせする時間の短縮に繋がっている
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呼量の波による応答遅延と応対品質のばらつきが課題に。基盤更改を機にAI活用を検討
──miraioの開発に至る前、コールセンターではどのような課題を抱えていましたか?
上條様:最も大きな課題は、呼量の波によってお客様を長くお待たせしてしまうことでした。限られた人数で対応しているため、有人オペレーターが処理できる呼量には限界があります。
当社のコールセンターでは、主に20数名のオペレーターが受電業務を担っています。しかし、問い合わせが集中する時間帯には、電話がつながるまでに5〜10分ほどお待たせすることが日常的にありました。電話がつながらない状況は、お客様からの苦情に直結します。さらに、コールセンターでは注文も承っているため、応答の遅れがお客様の機会損失につながる懸念もあり、早急な改善が必要でした。
──オペレーターの体制や応対品質には、どのような課題がありましたか?
上條様:オペレーターのスキルや応対品質に、ばらつきが生じていたことです。経験値には差があり、全員がすべての業務に対応できるわけではありません。そのため、呼量に応じて、経験豊富な人員とそれ以外の人員をどのように配置するか、日々調整する必要がありました。
限られた人員で安定した応対品質を維持するには、日々の采配だけに頼らず、体制を仕組み化することが求められていました。
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専門用語や多様な言い回しから要望を把握する「意図推定力」が導入の決め手に
──複数のAIソリューションを比較検討する中で、pluszeroのAIオペレーターを知ったきっかけを教えてください。
山本様:正確性と柔軟性を両立できるソリューションとして、紹介を受けたことがきっかけです。
コールセンターの業務効率化に向けて、複数のAIソリューションを調査していました。当社は金融機関であるため、誤った案内、いわゆるハルシネーションを防ぐ正確性が強く求められます。同時に、お客様と自然に対話できる生成AIの柔軟性も必要でした。
pluszeroのAIオペレーターは、その両方をバランスよく備えていたため、具体的な導入の検討を進めることにしました。
──複数社によるコンペで、「意図推定力」を重視した理由をお聞かせください。
上條様:お客様のご要望を、入り口で正確に把握するためです。
金融機関の窓口では専門用語が多く使われますが、お客様が必ずしも正しい用語でお問い合わせいただくとは限りません。そのため、お客様の発言を正しく理解し、適切な回答へ導く意図推定力が不可欠でした。
3社のAIをテストした結果、同じ内容であっても、言い回しを変えると回答の精度に差が生じました。その中で、pluszeroのAIは表現が変わっても意図を的確に汲み取れたため、信頼できると判断しました。

──意図推定力が特に優れていると感じた、具体的なエピソードはありますか?
上條様:「住所変更」という直接的な言葉がなくても、適切な手続きへ誘導できたことです。
特定のキーワードが発話されなければ手続きが進まないシステムもある中で、pluszeroのAIは「引っ越しをしました」「住民票が変わりました」といった表現から、お客様の意図を汲み取り、「住所変更ですね」と対応できていました。お客様の自由な発話を柔軟に理解できる点を、高く評価しています。
山本様:実際のオペレーターに近い対応力がある点も、優れていると感じました。
私自身、営業時代に約2ヶ月間、オペレーター研修を受けた経験があります。お客様の要件に入るまでに別の話題が出たとしても、本来の意図を見失わずに把握できる力が備わっていると実感しました。
──意図推定力以外に、導入を後押しした決め手はありましたか?
上條様:人と話しているような、自然で滑らかな会話ができる点です。
自由な発話にも対応し、ほとんどストレスなく対話を進められることは、お客様の満足度を維持するうえで重要な要素だと考えています。
山本様:将来的な業務範囲の拡大に対応できる、システムの柔軟性も大きな決め手でした。
今回の導入は単発の施策ではなく、段階的に対応範囲を広げていく構想です。将来的には、株価の照会機能や、顧客管理システム(CRM)との連携による応対履歴の自動入力なども見据えています。
こうした中長期的な構想に対応できる拡張性を備えていたことが、最終的な判断を後押ししました。
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有人割り込み機能と細やかな調整力で、トラブルを未然に防ぐ実運用体制を構築
──pluszeroとアップセルテクノロジィーズの開発・サポート体制について、どのような点を評価していますか。
山本様:pluszeroの要望を正確に汲み取る力とシステム設計力、アップセルテクノロジィーズのコールセンター運営ノウハウに基づく提案力を評価しています。
システム開発では、機能の実装に加えて、実際の業務に即した運用設計が不可欠です。約20拠点のコールセンターを運営するアップセルテクノロジィーズには、私たちが気づかなかったトークフローの分岐などを的確に指摘していただきました。pluszeroも、私たちが提示した研修用のトークフローから意図を正確に汲み取り、システム設計へ適切に落とし込んでくださいました。
週1回の定例会議では、改善要望や前回の対応結果を細かくすり合わせています。両社とのコミュニケーションもとりやすく、円滑に開発を進められました。

──AIオペレーターの対話品質を高めるため、開発プロセスではどのような点にこだわりましたか?
山本様:AIが返答する際の声の強さや高さなど、人間のオペレーターが普段あまり意識しない細部まで調整したことです。実運用では、お客様が違和感なく利用できる応対品質が求められます。
私たちの細かな要望に対しても、両社は迅速に対応し、音声のトーンなどを緻密に調整してくださいました。細部まで設定できるシステムの柔軟性と、要望を速やかに反映する対応力を高く評価しています。
上條様:お客様と対話する際の「間」の調整にも注力しました。検証の段階で、AIが話を進めるタイミングとお客様の発話が重なる事象が確認されたためです。
実際の通話音声を確認しながら、お客様が発話しやすくなるよう意図的に間を設けました。こうした調整を日々重ねることで、一方通行ではなく、AIとお客様が言葉を交わす双方向の対話へと品質を向上させています。
──実運用を支える管理画面の機能と、有人オペレーターとの連携についてお聞かせください。
上條様:最もこだわったのは、AIによる通話の途中で有人オペレーターが割り込める機能です。トラブルの予兆を察知した際、大きな問題へ発展する前に人が対応を引き継げるよう、開発当初から実装を要望していました。
現在は、スーパーバイザーやグループリーダーが、管理画面で複数の通話をリアルタイムに監視しています。たとえば、電話での意思確認が難しいお客様への対応時や、AIが復唱した内容に誤りがあるにもかかわらず、お客様が肯定してしまった場合には、管理者が通話に割り込み、有人対応へ切り替えます。
管理画面上で用件を把握したうえで、適切なオペレーターを指名して引き継げるため、苦情やトラブルの未然防止に大きく貢献しています。
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AIと人が共存するコールセンターへ。それぞれの強みを生かした最適なバランスを目指す
──リリース時点のmiraioの品質と、現在の進捗をどのように評価していますか?
山本様:他の音声ガイダンスと比べても、自然でストレスのない対話を実現できており、リリース時点で、十分にお客様に対応ができる品質に到達していました。実運用を開始してからも継続的に改善を重ね、品質はさらに向上しています。全体構想に対する現在の進捗は、2合目といったところです。今後、対応できる業務の範囲が広がっていくことを非常に楽しみにしています。

──人とAIの役割分担が進むことで、お客様にどのような価値を提供できると考えていますか?
上條様:最大の価値は、電話がつながらないというお客様の不満を解消できることです。お問い合わせが集中しても、お客様をお待たせせずに対応できるようになります。
今後、対応業務の範囲が広がれば、簡単な事務手続きはmiraioを通じて迅速に完結できます。お急ぎのお客様の時間を奪わず、用件に応じて速やかに対応できることが大きなメリットです。
山本様:顧客満足度と応対品質の向上にもつながると考えています。
AIが定型的な業務を担うことで、有人オペレーターは、お客様との関係構築により多くの時間を割けるようになります。AIと人がそれぞれの強みを生かすことで、お客様の目的に応じた応対が可能になります。
──miraioは、どのような課題を抱える企業におすすめできますか?
上條様:当社と同じように呼量が多く、お客様からのお電話がつながりにくいという課題を抱えている企業であったり、ハルシネーションを抑止した対応が必要な金融機関等におすすめです。
また、金融機関に限らず、たとえば飲食店の予約対応など、日常的に多くのお問い合わせを受ける業種にも適していると考えています。限られた人員で、電話応対の課題を解決したい企業にとっては、非常に有効な選択肢になるはずです。
■東海東京証券会社概要
社名:東海東京証券株式会社
代表者名:北川 尚子
本社所在地:愛知県名古屋市中村区名駅四丁目7番1号
事業内容:金融商品取引業
URL:https://www.tokaitokyo.co.jp/